タイムグラファーの製作


アマチュアが機械式時計の内部にまで踏み込もうとした時、一番やってみたいのは、歩度調整ではないでしょうか。
しかしそれを測定する、「タイムグラファー」は40年ほど前の国産機械式時計全盛期のものはもう製造されておらず、スイス製は30万円以上の価格でROLEXの時計が買えてしまいます。
仕事が電機関係である私は、もしかしたら作るのはそれほど難しくないのではと考え、自作を模索していました。しかし、今のこの時代、パソコンとマイク(ピックアップ)があればどうにかなるのではとの思いに至りました。
しかし、電機関係とは言え、ソフト技術者ではないので、ソフトの作成は無理です。既に同じことを考えている人がいるのではと思い、検索したところ、「びぶ朗」と言うソフトが既に公開されていました。このソフトを発見した時の歓喜!(@_@)

以下は、「びぶ朗」を用いて時計の歩度、調子などを見るための、ハード部分の製作記録です。

このようなソフトを開発された作者に深く感謝します。実現するためのハードは付録にすぎず、ミソはあくまでもソフトにあります。

1.試作一号機
タイムグラファーは、時計の音(振動)を拾って、歩度とテンプの片振れなどを見るための測定器です。
測定は、マイクか振動ピックアップのようなもので時計の音を拾う必要があります。
まずは、比較的簡単に手に入る、圧電ブザーとマイクアンプキット、それに「一合枡」を使って、作ってみました。

必要部品
圧電ブザー:圧電サウンダ他励振タイプ(リード線)
/KPE-126-1 (-)
マイクアンプ:ステレオマイクアンプキット/MIC-4558 (*)
マイク用シールド線1m
006P電池スナップ
006P電池(9Vの四角い電池)
3.5φモノラルミニブラグ
サポート:基板を浮かせる足に使います。
一合枡・・・\100ショップで入手
セロテープ
幅広ゴムバンド・・・\100ショップで入手
必要設備
ノートパソコン又は、普通のバソコン(Win XP)
必要工具
半田ゴテ、ニッパ、ラジオペンチ、半田
パソコンと\100ショップ購入品以外は全て、大阪日本橋の「共立エレショップ」で入手可能。
基板の組み立てに自信が無い場合は、完成品も売っています。
キット利用の場合で材料費は\2,000以下です。
アンプはステレオである必然性は無く、モノラルであれば数百円安くなりますが、将来片方をフィルターに改造することを念頭に、ステレオタイプにしました。
まだテストしていませんが、5Vで動作するタイプのものは、USBから電源をもらって、電池不要の可能性があります。
増幅アンプ:電圧利得220倍。
電子部品の半田付け経験ありの人には、30分もあれば作れます。
完成品は\800くらい高かったですが、やったことの無い人は絶対に完成品がお奨め。
電源は9Vの電池、出力はパソコンのマイク端子につなぎます。
音を拾うものは普通はマイクを考えますが、ダイナミックマイクはマグネット入りのため時計には危険、コンデンサマイクも密着に工夫が必要で、本来はブザーに使う圧電素子をマイク代わりに使うと言う逆転の発想。考えた人はエライ!(私ではありません)

ここから私のオリジナル。
圧電ブザーを解体し、中味だけにして、一合枡の裏にセロテープで貼ります。ブザーの線は根元でカツトし、シールド線で配線します。(ノイズ対策)
この時、部品面が下です。
ノイズ防止のため、圧電素子は全てテープで覆います。これをしたほうがS/N比がよくなります。
実は、一合枡ではなく木製の小物入れですが、大きさ形とも一合枡がピッタリです。
スピーカーBOXのような反響効果を狙いました。
これの前に、タッパウエアも試しましたが、こちらが良いです。
枡を使うには理由が他にもあります。






←解体前の圧電ブザー
時計を載せます。
真ん中がブザーに当たった方が良い時計と、ラグ(ベルト取り付け部)が当たった方が良い時計があります。
グラフを見ながら、大きくきれいに音が出る場所を探します。
一合枡のもう1つの狙い。
時計は姿勢差を測りますが、枡を使ったことで、あらゆる姿勢を再現可能。
これは、「12時上」
落ちずに、ブザーに密着するよう、幅広のゴムバンドで止めています。
「9時下」
簡単に姿勢が変えられます。

では、測定した結果を見てみましょう。
※ソフト(「びぶ朗」)に関しては、開発者様HPを参照下さい。

(1)クオーツ時計(セイコー)

当然のことですが、クォーツは一秒に一回「カッ、カッ」と動くので、1BPSです。
あちこち飛んでいるのは、周りで子供が騒いだため。(^_^;)
歩度、振り角等の表示はまだ精度不十分とのことですが、横一線にドット表示が出るので、機械式時計用測定器としては十分であることが、このデータからわかります。

(2)オメガ シーマスター(Cal.562)

所有するアンティーク機械式の中でも最高に近い実用精度が出ているオメガ シーマスター。特に問題無いようです。

(3)ロレックス(Cal.3185)

音が小さいため、設定に苦労しましたが、28800振動が確認できました。ニセモノは21600振動が多いので、振動数からは本物と同じみたいです。もちろん本物分の費用を払いましたので、本物でないと困りますが・・・(^_^;)

(4)グランドセイコー6146-8000

これも実用精度は申し分無い時計ですが、平置きでは少しずれるようです。

(5)儀象堂5802

これは自分で組み立てた儀像堂の5802と言うオリエント製キャリバーの時計。
組立てる時に、テンプを不用意に触ってしまい、振り角不足気味になっていると指摘されたもの。組立て後のタイムグラファー検査では詳しく説明してもらえなかったのですが、これを見る限り明らかに片振りかつ、歩度が合っていません。(^_^;)
ヒゲゼンマイの修正が必要なのか???


以上のように、このソフトは僅か¥2〜3千円の投資で機械式時計ファン垂涎のタイムグラファーが実現できてしまうと言う、素晴らしいものです。
作成者に大きな敬意を払いたいと思います。



2.音の分析
圧電ブザーで検出した時計の音は、どのようなものなのか。フィルターを検討するため、会社の休憩時間にマイクアンプの出力波形をデジタルオシロで観測してみました。

測定器:YOKOGAWA DL1540CL
被試験時計:ROYAL ORIENT 5振動

これは、一振動分の波形です。本当は、このオシロに搭載されているFFT機能で周波数分析をしたかったのですが、周囲の雑音を拾いすぎて、安定した分析が出来ませんでした。無響室などでの測定が必要のようですが、残念ながら勤めている会社はオーディオ関係では無いので、そういうものはありません。
深夜、みんなが帰ったあとに何れ又FFT分析にチャレンジしてみます。周囲の影響を受けていないと思われるタイミングで一振動分の波形を記録しました。
波形からわかること。
@一発目の後直ぐにあまり変わらないレベルの二発目信号が出ている。
Aその後、周期1.5ms(666Hz)くらいの振動が続く。
Bさらにその時、それに周期12ms(83Hz)くらいのうねり成分もある。
C一発目の直前では、上記二つの信号はかなり収まっている。
D他に数kHzのノイズ多数
この時計は5振動で動いていますので、一発めのピークは、200ms周期(5Hz *1)でやってきます。
※1:アンクルの往復で考えると、2.5Hzになりますが、音はその二倍で来ます。
従って欲しい信号だけを取り出そうとすると、カットオフ周波数で30Hzくらいのフィルターがあれば良いことになりますが、いかんせん問題は一発目の後の大きなピーク。これは一発めとのレベル差が少ないため、これを除去するのはほぼ不可能と思えます。
アナログ的なフィルターでは目的は達せられそうではありません。
1つの方法は、一発めの信号を受けた時点でパルス信号に変換してしまうことです。
こうすれば、一発目の直前の信号レベルとはかなり差があるので、パルスの長さを数十msにしておけば、その後の波形の乱れは全て無視され、きれいな測定が出来ると思われます。
デジタル回路では、ワンショットマルチバイブレータと言う回路がそれに相当しますが、パソコンのマイク入力端子に入れる前提だと、0−5Vの信号と言うわけにもいかないので、アナログ回路でそれを組む必要があります。うーん、どうするか・・・・
つづく